第52回宣伝会議賞の協賛企業賞受賞作が公式サイトでも発表されました。


受賞者には昨年の贈賞式や飲み会でお会いしたことのある方、SNSやブログなどで一方的に知ってる方などがいらっしゃいます。とてもうれしくもあり、それ以上に悔しくもあり、ちょっぴり複雑・・・。


そして受賞作はどれも自分には書けなかったものばかり。中には「これありなの?」と物議を呼びそうなコピーもありますが・・・。そのあたりも含めて特に気になった作品の感想などを書いてみたいと思います。


なお、あくまでもただのコピー好きな素人の意見ですので、独断と偏見とみにくい負け惜しみが多分に含まれていることをあらかじめご了承ください。知り合い補正とかも一切なしで。



【アソビズム】

僕は弱いけれど、僕たちは強い 小泉 峻介さん


素直に「うまいなぁ~」と思いました。ドラゴンポーカーじゃなくて大作RPGのコピーにしてもいいくらい(失礼)。前半と後半の対句を最小限の文字で成立させてる。でも単にテクニック頼みではなく、誰もが感じている自分の弱さ、仲間の心強さや絆の大切さで共感を呼び、説得力もある。どうやら静岡の方みたい。このままでは自称静岡NO.1の座があやうい。


【アットホーム】

物件数かと思った。 倉橋 拓也さん


まさにそのものズバリのド直球!!なぜこれを自分で出せなかったのか!!とやられた感でいっぱい。加盟店数をアピールするっていうちょっと変わったテーマに戸惑った人も多いはず。それにこれ以上ない短さで正解を出してる。アットホームは前回も「続きは店で」とシンプルで短いコピーを選んでいるので、次回もし出題されたらそのあたりをもっと意識しよう。


【ECC】

「かじりましょう。」篇 関根 祥量さん


一瞬「それは、鹿のエサですよ。英語で教えてあげたかった。」ってコピーを連想させて「ん?」と思った。でも登場人物の立ち位置がちょっと違う。そして最大のポイントは課題にあった「ECCをかじってほしい。」にちゃんと落とし込んでいること。ECCは以前にも「カイワで、ヘイワを。」など課題広告にあるフレーズを上手に取り込んだコピーを選んでる。豪快な外国人と断りきれない日本人の対比もコミカルでイメージしやすい。


【小田急不動産】

住まいのプロはたくさんいますが、小田急沿線のプロは私たちだけです。
入江 亮介さん


これもそのままド直球。「小田急沿線の住まいなら、小田急不動産」って課題にどうしたもんかと散々悩んだけど、どうしても差別化ができなかった。なら小田急沿線って入れちゃえばいいじゃん!!って目からウロコ。小田急沿線ならどこにも負けないって特別感もしっかり伝わる。


【キヤノン】

彼女がカメラ女子なので、僕はプリント男子になった。
松田 彩子さん


最大のポイントは「プリント男子」。このフレーズは出てこないわ~。こういう新しい言葉を生みだせるってのは素直にスゴイと思う。ナチュラルとうふで「豆腐女子」とか出しちゃった自分が恥ずかしい。女の子に合わせるちょっと弱気な男の子ってシチュエーションが今の時代にマッチしてて、どことなく乃木坂の歌詞っぽいイメージがする。いや、乃木坂の曲よく知らないんだけど・・・。


【クラシエフーズ】

てまひまかけた、そのまんま。 滝本 時生さん


何と言っても語感とリズムの良さが抜群。スッと読めてスッと入ってくる。そのうえで、できる限り丁寧にできる限り自然に近い商品を作っているということをわかりやすく表現してる。漢字を使わずに全部ひらがななのも、栗のコロっとした感じとやさしさを出すための計算・・・のはず。このままポスターとかに入っててもいい感じ。


【セゾンカード】

英世とセゾンと、時々諭吉。 大久保 雅英さん


センスあるわ~。こんなん絶対出てこない。出てきてもせいぜい、「俺とおまえと大五郎」が関の山(失礼)。特に時々諭吉がリアルですごく好き。「おまえまた英世かよ。オレ、今日セゾンだぜ。」みたいな会話が聞こえてきそう。若い世代に向けてというテーマにピッタリ。


【相模屋食料】

おっさんの意見、完全無視。 小松 涼平さん


こうきたかって感じ。自分をはじめ多くの人が女の子向けってことを意識して、オシャレなフレーズや女の子の気持ちを表現しようとしたはず。その中でこのコピーは相当目立つ。で、ちゃんと女の子のためだけに作ったってことも伝わる。もともとザク豆腐を作ったりしてユーモアがある会社なので、一見意外なようで納得のチョイス。インド人完全無視カレーを思いだした。


【セメダイン】

ビールと同じくらい、「とりあえず」が似合う。 小林 沙紀さん


課題であるセメダインの超多用途性を「とりあえず」のひとことに集約したのがスゴイ。こういう商品を表に出さずに商品の特性を表現するってのは、相当難しいと思う。「とりあえずセメダイン」とかもきっとあっただろうけど、「ビールと同じくらい」っていうフレーズが万能感を強調していて、あるとないとじゃ雲泥の差がある。


【大建工業】 

畳は、もう一度リビングになれる。 味村 伊澄さん


今回の協賛企業賞の中でも1・2を争うコピーだと思う。畳なんだけど微妙に畳じゃない商品に畳以上の付加価値があることをどうすれば訴求できるのか?課題自体がとっても難しかったし、誰もが苦戦したはず。フローリング全盛で畳の良さを知らいない子供が増えてる中(我が家にも畳の部屋がない)、ライフスタイルまで変えてしまえるような力がある。ターゲットへのアピールはもちろん、クライアントの心意気まで汲んだ素晴らしいコピー。一番喜んだのは大建工業の方だと思う。こういうコピーを作ってもらえると、企業も協賛した甲斐があるはず。


【トゥ・ディファクト】

持ち運びたい本もあれば、飾りたい本もあれば、こっそり買いたい本もある。
江島 ゆう子さん


「言いたかったことはこういうこと」ってのをそのまま素直に表現した感じ。本屋さんという身近な課題の割にとても難しくて、どうやって一言でうまく言うか?ばかりを考えてた。コピーは短いほどいいとされてるけど、無理にワンフレーズに収めるより、長くてもわかりやすくて伝わる方がいいに決まってる。50本出せるならいろんなパターンを試すべきだと改めて実感させられた。プロっぽくない雰囲気が逆に新鮮。こっそり買いたい本、確かにあるあるって共感もできる。


【マスメディアン】

なんの実績がなくても広告業界に入れるのは、学生くらいなんです。
 野田 貴之さん


「そういえばそうだよね」って気づきと納得感がハンパない。圧倒的説得力でターゲットの学生にピンポイントで刺さる。「なんの実績がなくても」のフレーズで間口を広げて、「~くらいです。」ではなく「~くらいなんです。」って部分で今しかないってことをより一層強調してる。この「なん」にセンスを感じる。学生はズルいって個人的感情もかなり入ってそう。さすが歴戦の強者。2年連続受賞は伊達じゃない。野田さんが以前応募したC1000ビタミンレモンのコピー「レモンはレモン過ぎる。」もその説得力で忘れられない大好きなコピーのひとつ。


【ゆうちょ銀行】

『備男備女』になろう 水谷 健さん


「貯金することがカッコいいと思わせる」という漠然とした難しい課題を、いかにうまくこなせるかでセンスが問われると思う。それを漢字をちょっと変えただけで見事に表現してる。元の言葉の美男美女のプラスイメージをそのままうまく利用してる。松坂桃李と佐々木のぞみあたりが、通帳を持って並んでるポスターが目に浮かぶ。



まだまだいいコピーがたくさんあるけど、語り出したらキリがないのでとりあえずこの辺で。ファイナリストはさらにこれ以上のコピーがあると思うと、今から楽しみでしょうがない。


で、別の意味で気になるコピーがいくつかある。これまた長くなりそうなのでその辺りはまたあとにしときます。