時間は少しさかのぼり、静岡すすめ会の翌々日。飲み会に参加してくれた方から「こんなのあるけどチャレンジしませんか?」とのお誘いが。


富嶽三十六プロジェクトの一環である【富嶽三十六コピーチャレンジ】

富士山は世界遺産に認定されたけれど、その価値を未来に残すためには人の力と保全しつづける資金が必要。富士山が世界遺産であるために、人々の気持ちを動かすコピー、もっと多くの人が寄付してくれるキッカケとなるコピーを募集。富嶽三十六景にちなんで36本のコピーを決めるというもの。


コピーを応募するには寄付が必要(1口1,000円で25本まで。50本なら2口)で、締め切りは7月18日。締め切りまで4日くらいしかないからかなり厳しい。でも富士山のお膝元の静岡県民がやらなくて誰がやる!?しかもしかも、優秀作を作った人は7月25日電通本社ビルで、あの中村禎さんが行う『最終コピーディレクション会』に招待されるとのこと。早速静岡会のメンバーと挑戦することに。

いざ考え出すと思ったよりはるかに難しい。そもそも静岡県民にとっては富士山なんて当たり前にある山で、正直それほどありがたみを感じてない(俺だけか?)。近いしいつでも行ける気がするから、登ったこともないし。ネットで調べると有名なゴミ問題以外にもいろいろ課題があるのはわかった。けど、それをうまく伝えて寄付に繋がるようなコピーがなかなかできない。

作るコピーのどれもが「今さら当たり前のことしか言ってないじゃん」って感じで全然ピンとこない。それでも締め切りギリギリまで悩んで、どうにかこうにか50本応募。勝負コピーと呼べるものもなく、手ごたえはまったくなし。もし万が一ディレクションに招待されてもどのみち仕事で行けないし。まあ参加することに意義があるってことで良しとしよう・・・と、この時点で全滅を確信して早速言い訳開始。

ところが締め切りから3日後、まさかまさかの1次通過のメールが。本当にまったく期待してなかったのでめちゃくちゃ驚いた。そしてなんと!!ディレクションに参加できるとのこと。うひょ~!!!と小躍りしながら妻にメールを見せて自画自賛。でも、一瞬で我に返る。そういえば仕事休めないんだった・・・。メールには出欠の可否を明日までにするようにと書いてあった。

24日はコピーの学校があって休みをとってるから今から連休は難しい。25日はお客さんとの約束があるうえに、夜間の当番もある。1件だけどすでに仕事も入ってる。仕方ない、今回は諦めるしかない・・・と何度も自分に言い聞かせる。でも、でもさ、あの電通だぜ電通。今後の人生で間違いなく行くことはない広告業界の聖地。それも業界無関係のずぶの素人がそこでディレクションに参加できるなんてどう考えても奇跡。近いうちにとてつもない不幸がおとづれるんじゃないかと。だったらなおさらここで何としても行っておかないと、あとで一生後悔する。とにかくあらゆる手段を使ってギリギリまで行ける方法を考えよう。全然寝付けずに朝までシミュレーションをくり返す。

次の日会社に行ってまずお客さんに電話。約束の日をずらしてもらう。第一段階クリア。次は25日に休みを入れている同僚と交渉開始。ここが一番ハードルが高い。土曜日だから家族との予定も入っているし、当然嫌がられる。けど、今回だけはどうしても引き下がれない。このチャンスがどれだけ大事かを涙ながらに力説。いやさすがに泣きはしないけど。休みを譲る代わりに白紙の小切手を渡して「好きな金額を書いて」と言いたいところだけど、そんな財力ないので吉野家のうな重三枚盛(1,650円)を提示。さらに今後もし急用があったら電光石火で休みを譲ることを条件に、ほとんど力づくで交渉成立!!夜の当番は二枚盛で若手社員に交代してもらった。これで仕事さえ増えなければ行ける可能性が出てきた。早速「出席します」と返事を出す。


「来週から死ぬ気で働くのでどうか誰も亡くなりませんように・・・。」



神様ありがとう!!必死の願いが通じたのか静かな夜が続き、無事に休めることに。いざ行けるとなるとめちゃくちゃ緊張してきた。ネットで何度も電車の時間と行き方を確認したり、服装は普段着でいいのかなんて田舎もん丸出しの質問したり、とにかく落ち着かない。さらにプレッシャーを与えてくれたのが、1次通過した149本のコピーのリスト。当日いいと思うものを発表できるようにと事前に送られてきた。

自分はまたしてもまさかまさかの3本通過。「いやいやいやいや、もしかしてこれってちょっと凄いんじゃない!?」と一瞬調子に乗ったけど、他のコピーのレベルの高さを見て一気に凹む。「そうそう、こういうこと言いたかったんだよ」ってのがたっくさん。この中でなぜ自分のコピーが通過したかのか?正直まったくわからない。こんなんで本当にディレクションに参加していいのか・・・。急に不安になってきた。