富嶽三十六プロジェクトの一環である【富嶽三十六コピーチャレンジ】に参加した話のつづき・・・
案内されて入った会議室は、イメージしていたそれよりもはるかに広い。中央にはいくつかのテーブル、そしてそれを囲むように椅子が配置され、これから始まるであろう熱く激しい論戦に臨む選ばれし若き才能が集うのを今や遅しと待ち構えていた・・・ってなにこれひどい。やっぱり又吉ってすごいんだなぁ。
「お願いします」と会釈をしてとりあえずいちばん端の席にすわる。奥では中村さんが準備をしてた。入り口で一緒になった彼はさっそく中村さんに挨拶に。こうしちゃおれんとすかさず便乗。中村さんとお会いするのは実は2度目。1度目は昨年の贈賞式。「地上波初」でシルバー獲りましたって言えばわかるかな?なんて思ったけどあえなく玉砕・・・。あの時はひとことくらいしか話せなかったからしかたないか。
開始時刻が近づくにつれ、徐々に参加者が集まってきた。各自空いてる席にすわりネームプレートをつける。(あの人、今年受賞した人だ!!)(あの人とあの人もSKATに載ってた!!)なんて心の中で大騒ぎ。何度かお会いしたことある人もいてちょっぴり安心したものの、そうそうたるメンバーに場違い感がハンパない。本当にこんなとこにいていいの?と改めて不安と緊張がおそってくる。
集まったのは17人。そのほとんどがいわゆる中村組。コピーを募集するにあたり、最初にコピー講座の受講生やOBを中心に声をかけ、その反響が大きかったので一般にも募集したとのこと。どうりでレベルが高いはずだ。応募総数は1719本。短期間の割には想像してたよりはるかに多い。その中で1次通過が149本。やっぱりここに残っただけでも奇跡に近い。この中から36本が選ばれる予定。
いよいよディレクション開始。中村さんの挨拶のあと、今回のプロジェクトが行われることになった経緯や趣旨、NPO法人の活動内容、富士山の世界遺産登録の維持にはたくさんの課題があることが説明された。
詳しくはこちら➡ いつまでも富士山を世界遺産に
そのあとひとりずつ順番に、1次通過の中からいいと思ったコピーをあげていく。事前に何本か選んでいたけど、オリエンを聞くとまた少し評価が変わってきてその場で変更。他の人の意見を聞きながら(これは鉄板だよね)とか(何でこれ誰も選ばないの?)とか(声が裏返ったらどうしよう)とか、すっかり脳内ポイズンベリー状態。結局自分のコピーには一票も入らず・・・。予想通りとはいえ、ちょっと凹む。次に中村さんが選んだ2次通過コピーを発表。もしかしたら奇跡の逆転なるか!?と淡い期待を抱くも、自分の番号はあっさり飛ばされあえなく全滅。凹みすぎて反対側に突き抜けそう・・・。
2次通過コピー+投票数上位のコピーをすべて壁に貼りだす。そして各自、その中からいいと思うものに付箋を貼っていく。
おおぉ~、これってよく見る【審査会場の様子】ってやつじゃん・・・今さらながらとちょっと感動。ここから中村さんを中心にしてみんなで意見を出し合う。
得票数の多いコピーはやっぱり誰が見ても納得のクオリティで、ほぼノータイムで採用決定。その後得票数の多いものから順番に検討していく。投票した人がどういう理由で選んだのかを説明。時には書いた本人にどういう意図でこの表現にしたのかを聞く。同じ切り口・視点・キーワード・ニュアンスのコピー並べてと比較しながら、1番いいコピーを選んでいく。
「そのコピー、ちょっとピンとこないんですけど」
「これならこっちの方が伝わるんじゃないですか?」
「ここを削って短くしたらどう?」
「でもそうすると意味が変わってきちゃうよ」
「これっていかにもコピーって感じでいやらしくない?」
「老人ホームに貼り出したら面白いかも?」
「ストレートすぎるけど、これくらい言い切った方がいいんじゃない」
「山梨と静岡ってそんなに仲悪いの?」
「この句点、いらなくない?」
コピーから受ける印象は人によって千差万別なのはわかってる。でもそれを目の前でリアルタイムで聞ける機会なんてめったにない。自分とは正反対の意見や思いもよらない提案がじゃんじゃん出てくる。とにかくアツい。「少しでもいいコピーを選ぼう」って熱意が伝わってくる。休憩するのも忘れ、議論はどんどん白熱し、時間はあっという間に過ぎていく。ちなみに休憩中に出された水は富士山のおいしい水でした。さすが電通。
残り5本くらいになると、どれも横一線でなかなか決まらなくなってきた。中村さんから「いいと思うなら1次で落選したコピーも復活OK」と自分のコピーをアピールするチャンスをもらえたけど、今さら没コピーを推せる自信もなくダンマリ。あとで「実際のプレゼンならたとえ自信なくてもチャンスがあればどんどんアピールしなきゃ勝ち取れっこない」と言われ納得。もっと貪欲にガムシャラにならないと結果はついてこない。
開始から4時間。ラストは「その手があったか!!」と誰もが納得のミラクル改変案が飛び出して、全員一致で36本目が決定。会場は達成感と一体感と拍手で包まれた。最後に選ばれた36本を作った人を発表。いいと思ったコピーのほとんどが中村さんの作品。そしてそれ以外は軒並み中村組が名を連ねてた。
その中でも1番多く採用されたコピーライターさんに「こんなに採用されるなんてスゴイですね」って声をかけたらひとこと・・・
「どうせやるなら誰よりもいいコピー書いて1番を獲らないと意味ないですから」
(ああ、これは勝てっこない)と一瞬で思い知らされた。ふだんはとっても優しくてどちらかというとボーっとしてる感じ(失礼)の方なのに、その言葉には自信と「まだまだこんなもんじゃない」って思いが溢れてた。きっとこれだけ採用されても満足なんかしてないだと思う。
あわよくば1次通過、まぐれでも何でもいいからディレクションに参加できればいいなぁって気持ちで応募して、実際この場に居られることだけで満足してしまっている自分。ハナから勝負になるわけがない。経験も実力も勝てっこないのはわかってる。だったらなおさら気持ちだけは負けちゃいけなかった。今更気づいても遅いけど。ちくしょう・・・。
それでも、この日この場に入られたことは何物にも代え難い経験で、本当に幸運だったと思う。静岡県民として微力ながらも富士山の未来に貢献できる機会を与えていただいたことに、心から感謝したい。もちろんこれっきりで終わらせることなく、自分にできることはないかを考えていきたいと思う。
中村さん、このプロジェクトの関わるスタッフの皆さん、一緒にディレクションに参加してくださった皆さん、本当にありがとうございました。
このあと打ち上げがあるので、もう少しだけ続きます・・・