3月8日、今年も虎ノ門ヒルズで贈賞式が開催され、第53回宣伝会議賞のグランプリをはじめとする各賞が決定しました。


第53回宣伝会議賞 受賞作品発表


ファイナリストが発表された時点でグランプリ予想をするつもりが、またしても間に合わず・・・。後付けではありますが、例によって独断と偏見と負け惜しみを多分に含んだ感想などを。


『グランプリ』


【親子】篇 
 ジェーティービィー/今野和人さん


応募総数46万7936件の頂点は、第45回以来久々にCM作品が受賞。ノミネートを見た段階で『CMの方がレベル高いな~』と思った人も多かったはず。個人的には、これかマスメディアンかな?と思ってました。

いつものグランプリに比べるとインパクトや派手さは少し物足りないかもしれない。でも父と娘の微妙な関係を誰もがイメージしやすい日常のワンシーンで表現しながら、ちょっとした裏切りとさりげない優しさでほっこりするストーリーに仕上げてる。ツンデレな娘には審査員も弱かったみたい。家にいると邪魔者扱いされてる自分がもし娘にこんなんされたら、間違いなく泣く自信がある。

受賞者が芸人さんでしかもチャレンジブロガーなんて、芸人さんは知名度アップ、主催者側としても話題にしやすいしWin-Winよね。けど芸人さんなら受賞インタビューでもっと笑いを狙うべきだったんじゃないの?なんて大きなお世話ですかね。すごく落ち着いた真面目な印象の方だったので、どんなネタをするのか見てみたい。そういえばひっそりやってた芸人チャレンジ企画はどうなったの?なかったことにされてるのかな?


『コピーゴールド』

通勤時間が20分短くなると、
年収30%UPと同じだけ幸福度があがる。
という調査結果があります。

つまり、
あなたの年収が500万円なら
150万円もらえるようなものです。


アットホーム/水野百合江さん


インパクトでいえばグランプリより圧倒的にこっち。おそらく初見で「これってボディコピーじゃん!!」って突っ込んだ人が多数いたはず。とにかく長い。でもこれ以上削れないほど無駄がなく、説得力もハンパない。目立つための戦略としてわざと長いコピーを出すこともあるけど、完成度が段違い。

第50回のCMゴールドが、長谷川工業のルカーノで2本立てだった。最初に見た時は「2本立てなんてズルくね?」と思ったけど、どこにも禁止だなんて書いてない。誰もやらないことを最初にやるってのは発想力はもちろん勇気だっている。今回も『コピー=短くシンプルに』って散々刷り込まれた先入観を見事にぶち破ってチャレンジした結果の受賞。参りました。ただ同じ手は二度と通用しそうにないよね。


『CMゴールド』

【季節を味わう】篇  キッコーマン/芳野周司さん


決め手は「季節は和食にある」って最後のフレーズだと思う。他のキッコーマンの作品はしょうゆメインだけど、これは季節ごとに素材の旬を見極め最大限に活かす和食の魅力が表現されていて課題にちゃんと応えてる。

コンペの性質上、クライアントの意向を反映するのが企業賞、審査員が選ぶ上位賞はその枠からある程度はみ出ても面白ければあり・・・みたいな風潮があるけど、やっぱり課題をちゃんと踏まえたうえで優秀な作品が評価されるべきで、その意味でもふさわしい。「長い間意識不明だった人にいきなり鍋でも食わせたのかよ!?」なんてツッコミは野暮よね。

受賞された方は元チャレンジブロガーで直接面識はないけど今でもブログはちょくちょく覗いてる。受賞インタビューで今にも泣き出しそうだったのが印象的。思わずガンバレ!!と心の中で叫んでた。「いつか贈賞式で会えたらいいな~」と思っていた方のひとりなので、卒業されてしまうのはちょっと残念。


『眞木準賞』

きのう、きょう、アース
  アース製薬/市川雅一さん


シンプル イズ スベスベストとの一騎打ち。どうしても谷村新司が邪魔をするので、個人的には牛乳石鹸を推してたんだけど、最終的には「やっぱりこれか~」って感じ。牛乳石鹸は他の商品でも言えなくはないけど、これはアース製薬でしか使えない。そして過去から未来まで連想できるスケール感。その辺で差がついたんじゃないかと。誰にでも書けそうで書けないという点では、どちらも甲乙つけがたいし、その着眼点とセンスは本当にうらやましいとしかいいようがない。


『シルバー』


模型にも、本物にも。  セメダイン/阿部眞史さん


CMは「おーい」 DMは「あのね」  

ディーエムソリューションズ/林 次郎さん


特に好きなのはこの2作品。どちらもコピーのスタイルとしては王道だけど、クライアントの意向がちゃんと反映されていて、短い中に商品の特徴やメリットが凝縮されてる。しかも誰が見てもとってもわかりやすく、伝わるスピードも速い。短いコピーが苦手な自分にとっては、ザ・お手本って感じの作品。


マスメディアンはとても好きだったから選外だったのは予想外。ジャルジャルレインフォレストアライアンスのCM案も、難しい課題をシニカルなオチで上手に締めていて好きだったんだけどなぁ。まあこのレベルまでくると、あとは好みの問題でしかないんだろうけど。それしても予想って難しい・・・。


贈賞式を見てると、舞踏会に行けなかったシンデレラみたいな気分になる。それでも何度も見ちゃうんだけど。助けてくれる魔女もいないしカボチャも馬車もないわけ・・・。コピーを書く力はもちろん、ある程度の運も兼ね備えないといけない舞台。来年こそは必ずたどり着いてやる!!と言いたいところだけど、現状でははるかかなたどころか別次元の世界にしか思えない。さてどうしたものか。

とにかく受賞した皆さん、本当におめでとうございます。うらやましすぎて吐きそうです。こんなにすごい作品と圧倒的な差を見せつけられると、とてもじゃないけどこの先応募作を晒せる気がしない・・・。あとグランプリを手書きしなきゃならないSKATは買う気がしない・・・いやもちろん買うけれども。